打撲を防ぐ「ガード」と、ねじれを防ぐ「ブレース」の決定的な違い
オフロードバイクの装備を揃える際、ヘルメットやブーツの次に重要視していただきたいのが膝のプロテクターです。しかし、膝の装備には大きく分けて「ニーガード」と「ニーブレース」の2種類があり、その役割は全く異なります。一般的に安価で手に入る「ニーガード」は、主にプラスチックのカップで膝のお皿や脛を覆い、転倒時の打撲や擦り傷を防ぐことを目的としています。岩にぶつけた際の衝撃吸収には役立ちますが、関節の動きを制限する機能はほとんどありません。
一方、「ニーブレース」は、打撲の保護に加えて「関節の異常な動きを抑制する」という極めて重要な機能を持っています。エンデューロでは、バランスを崩して足を地面に強くついたり、轍(わだち)に足先が引っかかったりすることで、膝に強烈なねじれの力が加わることが多々あります。このとき、ニーブレースは金属や高強度樹脂のフレームとヒンジ構造によって、人間の膝が本来曲がらない方向へ動くのを物理的に阻止します。これにより、ライダーにとって致命傷となりうる前十字靭帯(ACL)や内側側副靭帯(MCL)の断裂といった大怪我を防ぐ役割を果たします。見た目は似ていますが、ニーブレースは「着る保険」とも言える高度な医療機器に近い設計思想で作られているのです。
価格差の理由とハイエンドモデルの性能
ニーガードが数千円から1万円程度で購入できるのに対し、ニーブレースは左右セットで5万円から10万円以上と、非常に高価なアイテムです。この価格差に躊躇するライダーも多いですが、膝の靭帯を損傷した場合の手術費や入院費、仕事への影響を考えれば、決して高い投資ではありません。高価格の理由は、その複雑な構造と素材にあります。例えば、人気ブランドである「POD」の製品は、人工筋肉のようなリガメント(紐)を使用した独自のヒンジシステムを採用し、スムーズな動きと強度を両立しています。また「Mobius」は、ケーブルにテンションを掛けて膝全体を包み込むような固定方法を採用するなど、各メーカーが特許技術を駆使して安全性を追求しています。
また、素材にカーボンや軽量な複合素材を使用しているモデルも多く、長時間のレースでも疲れにくい軽さと、転倒時の衝撃に耐える剛性が確保されています。安価なモデルではヒンジの動きが渋く、ペダリングの妨げになることがありますが、トップモデルになればなるほど、装着していることを忘れるほど自然な動きが可能になります。競技レベルが上がり、スピード域が高くなったり、難所での激しい足つきが増えたりするようであれば、迷わずニーブレースへのステップアップをおすすめします。
効果を最大限に発揮するための装着とサイズ選び
ニーブレースはいかに高性能なものであっても、サイズが合っていなければその効果を発揮できません。フレームが膝の骨格にぴったりとフィットし、ずれないことが絶対条件です。大きすぎるサイズを選ぶと、転倒時にブレースごと回転してしまい、逆に怪我の原因になることもあります。購入時は必ず試着を行い、膝の幅や太ももの太さに合わせてサイズチャートを厳密に確認しましょう。多くのモデルには、フィット感を微調整するためのパッドが付属しているため、自分の足の形に合わせてカスタマイズすることも大切です。
装着時のポイントとして、直接肌に付けるのではなく、薄手のロングソックスや専用のインナースリーブの上から装着することを推奨します。これにより、汗による肌荒れやブレースのズレを防ぐことができます。また、固定用ストラップを締める順番も重要です。一般的には、ふくらはぎ上部のストラップを最初に締めることで、ブレースの位置を正しい位置(膝関節)にアンカー(固定)させることができます。最後にオフロードブーツを履くことでブレースの下半分が固定され、強固なプロテクションシステムが完成します。ブーツの履き口の広さによってはブレースと干渉する場合もあるため、ブーツとの相性も併せてチェックしておくと安心です。